黒臼洋蘭園 胡蝶蘭専門店らんや様
インタビュー
卸100%からEC売上80%へ
黒臼洋蘭園が
「ネットショップ大賞」で掴んだ
信頼と未来
左:常務 黒臼一聡様/右:園主 黒臼秀之様
埼玉県さいたま市で日本最大級の胡蝶蘭農園を運営する「黒臼洋蘭園」。1980年代の創業から40年近く、徹底した品質管理と情熱で胡蝶蘭の可能性を追求してきた企業です。かつては市場への卸売が10割を占めていましたが、ネット社会への変化をいち早く察知し、2010年代から本格的に自社ECサイトへと舵を切りました。
2017年にはじめてネットショップ大賞を受賞して以降、現在では売上の約8割をECが占めるまでに成長。単なる「生産」の枠を超え、デジタル技術と顧客の声を融合させた「攻めの農業」を展開しています。今回は、同園の取締役であり、次期社長として事業承継を見据える黒臼一聡様にお話を伺いました。
- 卸売100%からの決断と、
台湾で見た「胡蝶蘭の可能性」 - EC化率80%への軌跡。
「どこを見ても黒臼」を実現する攻めの戦略 - 「失敗が許されない」贈答品の世界。
信頼を築く誠実な顧客対応 - EストアーショップサーブとRPAが支える、
パンクしない運営体制 - 日本の農業を「かっこいい」産業へ。
黒臼洋蘭園が描く未来の形
卸売100%からの決断と、
台湾で見た「胡蝶蘭の可能性」
創業の歴史と家業への想い
まずは、黒臼洋蘭園の成り立ちについて教えてください
黒臼常務:会社が始まったのはちょうど私が生まれた頃で、約40年の歴史があります。最初は父と母、祖母、そしてパートさんの4人という、本当に小さな規模からのスタートでした。私は小さい頃からその背中を見て育ちましたし、広大な温室で胡蝶蘭に囲まれて過ごしてきました。だから、誰よりも胡蝶蘭を見る目だけはあると自負しています。ただ、父からは一度も『次はお前が継げ』と言われたことはなかったです。
人生を変えた台湾への旅
そこから、なぜご自身で事業を継ごうと思われたのでしょうか
黒臼常務:学生の頃、父が台湾にある苗の仕入れ先に連れて行ってくれたんです。それが人生の大きなターニングポイントになりました。台湾の胡蝶蘭生産は日本よりも遥かに進んでいて、オランダなどの事例を参考に、信じられないような規模感で胡蝶蘭を生産していました。その光景を目の当たりにして、『胡蝶蘭ってこんなに面白いんだ、ビジネスとして可能性があるんだ』と。そこから一気に、自分がこの園を継いで大きくしていこうと考えるようになりました。
市場の飽和と直販へのシフト
EC(直販)に力を入れ始めたきっかけは何だったのですか
黒臼常務:実は10年ほど前までは、うちは卸が10割でした。全国の市場へ出荷し、お花屋さんが仕入れるという伝統的な流通です。しかし、ネットの普及で誰でも売れる時代になり、市場が飽和して価格が暴落してしまいました。当時は年間30万株という日本トップクラスの規模でしたが、作れば作るほど赤字が出る『薄利多売』の限界。これはまずいと、一気に直販へのシフトを決断しました。当時、Eストアーショップサーブさんの売上は年間1000万円もなかった頃の話です。
EC化率80%への軌跡。
「どこを見ても黒臼」を実現する攻めの戦略
未経験からのEC責任者就任
卸から直販への転換は、社内でも大きな変化だったのではないですか
黒臼常務:最初は外部の方にお願いしていたのですが、当時の担当者が退職したのを機に、私が『やります』と手を挙げて責任者になりました。もともとは生産管理の責任者だったので、農業大学などで得た『育てる知識』はありましたが、『ネットで売るノウハウ』はゼロ。そこで、広告代理店に勤める親戚に『力を貸してほしい』と頼み込み、一緒にサイト作りを始めました。リニューアルや広告運用を徹底的に行い、2017年頃に一気に売上が伸び、ネットショップ大賞もいただけるようになりました。
「露出を増やす」ことへの徹底したこだわり
売上を伸ばし続けるために、どのような方針で運用されていますか
黒臼常務:農業従事者は『良いものを作れば売れる』と思いがちですが、現実はそうではありません。僕はとにかく『露出』を増やすことを目標にしています。リスティング広告、SEO、YouTube、SNS。胡蝶蘭で検索したときに『どこを見ても黒臼洋蘭園がいる』という状態にしたい。外部パートナーとは半分コンサルのような関係で、常に新しい施策を試しています。一番もったいないのは『考えている時間』。何もしないのが一番の悪。とりあえず全力でやってみて、ダメならやめる。そのスピード感が今に繋がっています。
直販だから実現できる価格設定の自由とビジネスの革新
現在は売上の8割がECとのことですが、経営面でのメリットは
黒臼常務:一番大きいのは価格決定の自由を持てることです。市場(卸)だと、自分たちで値段を決められません。資材が高騰しても価格に反映できなければ、企業としての継続は難しくなります。今は直販が8割ですが、理想は100%に近づけたい。もちろん資金繰りは大変でしたが、お客様に直接ご購入いただき、長くご愛顧いただける関係を築けたことで、自分たちの信じた道は間違っていなかったと確信することができました。
「失敗が許されない」贈答品の世界。
信頼を築く誠実な顧客対応
「本当の声」を聞くことの厳しさと価値
卸売から直販に変わって、お客様との接し方は変わりましたか
黒臼常務:全然違いますね。卸のときは、お花屋さんの声は入ってきても、お客様の生の声は届かなかった。直販にしたら、口コミや電話で『本当のお客様の声』が入るようになりました。良い声ばかりではありません。届いた時に花が崩れていて、『腐ったメロンを送っているのと一緒だ』と強くお叱りを受けたこともあります。胡蝶蘭は贈答品なので、失敗するとお客様の顔を潰すことになり、怒りは何倍にもなります。その声を真摯に受け止め、二度と起きないよう社内で共有し、梱包や配送スピードを一つずつ改善していったのが今に結びついています。
新幹線で代品を届けた「生産者直販」のプライド
「生産者直販」の強みはどこにあるとお考えですか
黒臼常務:一番は対応力です。在庫を常に持っているから、トラブルがあってもすぐに代替品を出せる。以前、配送事故でどうしても配送が間に合わない注文があったのですが、スタッフが新幹線で直接お届けに行きました。生産者だからこそのスピード対応。それが信用の積み重ねになるんです。胡蝶蘭を発注する方は、札の文字一つ、届け日一つとってもミスが許されない。だからこそ『専門店』としての安心感が選ばれる理由になります。
幸せの連鎖を生み出すコミュニティ
SNSでの発信も積極的に行われていますね
黒臼常務:うちは『胡蝶蘭とともに幸せの連鎖を生み出す会社』でありたいと思っています。贈る人、もらう人、そして私たち生産者。全員が幸せになる関係です。最近はおしゃれに見せるよりも、『私たちが作っています』という社員の顔を出すようにしています。売って終わりではなく、育て方の相談にも乗る。そうすることで、お客様との繋がりが深くなり、新しいコミュニティが生まれる。『頼んでよかった』という言葉が、私たちの次のモチベーションになるんです。
EストアーショップサーブとRPAが支える、
パンクしない運営体制
伴走してくれるサポート体制への信頼
長年Eストアーショップサーブをご利用いただいていますが、サポート面はいかがですか
黒臼常務:正直なところ、カートを見直すことを考えたことはあります。でも、当時の担当さんが来てくれて、フォローが本当にすごかった。エンジニアの方と一緒に現場の問題を一個ずつ解決してくれて、『そこまでやってくれるんだ』と驚きました。電話したらすぐに出てくれる手厚いサポートは、私たちのような現場が忙しい人間にとって、代えがたい安心感になっています。
RPA導入による受注業務の劇的改善
運営の効率化という点ではいかがでしょうか
黒臼常務:Eストアーさんに紹介してもらったRPAは、本当に導入してよかったです。売上が伸びる一方で、手作業での受注入力や電話対応はパンク寸前でした。もしRPAがなかったら、受注業務が崩壊していた年がいくつもあります。こうした技術を取り入れることで、少人数でも大規模なEC運営が可能になりました。
ネットショップ大賞がもたらす「信用」という名の資産
ネットショップ大賞を受賞したことによる影響は感じられますか
黒臼常務:直接的な売上の数字以上に、『信用』のプラスには間違いなくなっています。胡蝶蘭を頼む法人の担当者は、絶対に失敗したくない。だから会社概要や実績を細かくチェックします。そのときに『ネットショップ大賞受賞』という実績があれば、初めての方でも安心して背中を押してもらえる。SNSやブログで受賞を発信することも、自分たちのブランド力を高める大きな力になっています。
日本の農業を「かっこいい」産業へ。
黒臼洋蘭園が描く未来の形
オランダの最先端技術を日本へ
今後の事業のビジョンについて教えてください
黒臼常務:まずは5年以内に、今の規模感の上限である売上13億まで持っていきたい。その先は、オランダのような最先端の技術を取り入れた大規模温室による、超効率的な生産体制を目指しています。オランダの農園は年間1000万株を生産するような、桁違いの規模感です。日本独自の『贈答文化』に合わせた品質を維持しつつ、技術的には世界の最先端をいく。そんな農園を作っていきたいですね。
「かっこ悪い農業」のイメージを変えたい
農業の担い手不足についても強い危機感を持たれていますね
黒臼常務:日本の農業は20〜30代がほとんどおらず、このままだと食料自給率も下がっていきます。だからこそ、農業=かっこ悪い、きついというイメージを変えたい。『農業ってこんなに最先端なんだ』と言うことを知っていただきたいです。そのためにも、SNSやYouTubeを通じて、農業の本当の魅力を発信し続けることが重要だと思っています。
これからECに挑む方々へのメッセージ
最後に、これからネットショップで成功を目指す店舗様へアドバイスをお願いします
黒臼常務:ECサイトを立ち上げて動かしているなら、あとはお客様の声を真摯に反映させていけば、必ず形になります。一番難しいのは『立ち上げるまでの腰を上げること』。業界内でも『直販がしたい』と言いながら、何年経ってもやらない人が多い。思い立ったらすぐ行動です。最後は結局、本人の熱量がすべて。コストはかかりますが、まずは一歩、動き出すことが未来を変えるはずです。